「ノスタルジア」<ヴェルディ:レクィエム>(タルコフスキー9)

ここは撮影地イタリアに尊敬の念を示し、オペラ座のヴェルディしかない。タルコフスキーがなぜこの映画にヴェルディのレクィエムを採用したのかはよくわからないが、この圧倒的なイタリアというものから逃れることはできない。ボクはこの映画を見て最初ちょっとショックだったのは、あまりに“西欧的”になってしまったことだ。

イタリアの都市をめぐって、彼は終末へと導かれていく。彼のそばには“狂人”の残していった犬しかいない。タルコフスキーは「ノスタルジアとは何か」と問われて「郷愁というようなものではない」という異様な答えをしている。・・・

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Commented by 異邦人 at 2015-09-30 22:58 x
タルコフスキーがノスタルジアの映画に、このウェルディーのレクイエムを採用したことには、とてつもなく深い意味があります。それは、このウェルディーのレクイエムが、映画『偉大な生涯の物語』の中で、重い十字架を背負って歩く、ナザレの イエスの姿を描く時に、このウェルディーのレクイエムの曲が使われているからです。この事実に気付くと、ノルタルジアの冒頭の場面の意味がはっきりとわかってきます。一本の電信柱は、十字架の見立てとなっているのです。つまり、タルコフスキーにとって、このウェルディーのレクイエムは、重い十字架を背負って歩くイエス・キリストの姿の見立ての音楽となっており、ライトモチーフであるということです。ですから映画の最後のゴルチャコフが一本の燈明をもって歩く時に、このウェルディーの曲が使われるのも、そこにこの曲を流すことによって、重い十字架を背負って歩くイエスの姿を実は描きこんでいるということなのです。つまりウェルディーレクイエムを使用することによって映像に二つの意味を描きこんでいるのであり、そのことによって、冒頭の場面のシーンの意味が理解できてくるのです。そのようなことで一度『偉大な生涯の物語』の映画の中で、重い十字架を背負って歩くイエスのシーンにウェルディーのレクイエムが使われているということを把握してくると、いろいろとわかってくると思います。
Commented by kugayama2005 at 2015-10-01 22:13
異邦人さんこんにちは。ちょうどタルさん映画をゆかしく思っていました。サクリファイスのマタイ受難曲には、だいぶ違和感を覚えましたが、こっちは自然な感じがしました。ご教示ありがとうございます。また近々、タル通しで再視聴してみたいです。ボクが全映画を自分で持っているのはタルのみです。一番好きなのは「アンドレイ・ルブリョフ」。次は「惑星ソラリス」。ヨーロッパや北欧の作品は、見ていて眠ってしまいます。「眠れるのはいいこと」と朝比奈隆さんはおっしゃいまして、私の音楽を聴いて「どうか休んでください」。うーむ、大フィルどうなってるんだろう。
by kugayama2005 | 2005-12-14 04:47 | ■映画の楽しみ | Trackback | Comments(2)

君の名前の意味を聞いたら “山のきつね” まき毛はいかんせん狐色 瞳は草の緑をうつす好奇心。


by kugayama2005