2005年 12月 20日
「鏡2」<LD>(タルコフスキー14)
タルコフスキーにとってのリアルな家庭とは何だったのだろう。夫人ラリッサが87年、インタビューに答えている。「彼はソビエトで17年間仕事がありませんでした。17ヶ月じゃありませんよ。その間、私がずっと家計をささえてきたのです。多くを語りたくありません・・・その日を生きていくことさえ難しかったのです。」
その後出国したタルコフスキーを待っていたのは、健康保険なしで受ける巨額の癌治療費だった。詩人の父もさしたる収入が無く、2代にわたってロシア的自由人として生きたといえよう。戦争中たべものに困り、タルコフスキーの母が装飾品を売りに農家を訪ねていく場面が「鏡」にある。その農家の婦人を彼の妻が演じている。
LDのジャケットに採用されているおそろしげな母の顔(昨日掲載)は、思い直して品物を売るのをやめて帰ろうとすると、農婦に“鶏の首をはねてほしい”と強要される場面。映画では、母と妻を同じ女優が演じ、その母・妻を現に妻である女優の農婦が追い詰めるという・・・。