2016年 09月 02日
秋だから小鳥包み 012 西行
(前半は再掲)
本の感想をパラパラ読んでいたら、西行の歌集について「どこがいいのかわからない」というのがあった。実はボクも西行はよくわからない面が多いと思っていた、とはいえ、日本最高の詩人であることは間違いない。西行は、平清盛と同い年だ。武士の興隆を見ながら、武士から脱落し、60歳ころになって平家の滅亡を直視した。「年長けて」なのだ。平氏滅亡以後の西行が、やはりほんとうの西行なんだろう。
「西行物語」などで理想化されてしまった西行を忘れて、西行のできるだけリアルな姿を求めるにはどうすればいいのだろうか。そういう視点で、幾つかのボクなりのフィクションを作ってみた。
出家 1
鳥羽院の寵愛にほとほと嫌気がさしていたところ、検非違使にされることになった。そこから逃げるには、出家しか方法がない。
そもそも家が裕福で、文人でもある佐藤義清(西行)が、現場で人の捕縛や斬殺などもする検非違使になりたいわけがない。
出家 2
出家に際して、愛娘を縁側から蹴落とすという、「西行物語」では序盤の名場面だ。
しかし実際は、「発心集」にあるように、弟に家督を譲り、娘の養育を頼んだというのが正しいだろう。「発心集」では、2、3年して娘の様子を覗き見にきたことになっているが、実際は佐藤家との何らかの交流があったのではないかと思う。