【第138夜】
偶然、ポルノ小説作家の私小説まがいで、
彼自身のばらばらになった家族のかなしみを知った。
しかしそれはもっと貴重ななにかの、
因業を隠す
女体好きの弱弱しいプロのあざとい謎かけだろうと思い、
とっさにその本を床に投げつけた。
この男のうそに弱さがある。
理由を求める弱さには、モダーンな異臭がする。
できることなら次の燃えるゴミの日に出したい。
しかしこれは。
世界の裳裾(スカートの先端)を手でつかんでいるやつのにおいなんだ、
そう思って半ばする畏敬と憎悪が、
砂地の上げ潮のように満ちてきた。