2019年 07月 31日
2019日記【211】斉明(天智・天武)持統期に至るまでの私的妄想 131
<承前>
◾️陶弘景「真誥」の私訳
◾️少女神女(13歳くらい)が降臨<続き>
楊羲(当時36歳の修行者)のもとに紫微夫人が降臨し、神女・安の鬱姫(13歳くらい)を連れてきた。紫微夫人は楊羲に、「この姫をあなたのものにしてしまったら?」と迫った。
鬱姫は、楊羲に、
「これからあなたに詩を贈るので、あなたはそれを筆で書きとめなさい」と言い、次のように吟じた。
雲の城、天に立ちおり
聳ゆる、鬱羅の玉台よ
紫の宮、緑の山に映え
霊観は、峨々と萌えつ
玉宝の、朱き小部屋に
高徳は、暁色に証さる
伏して、雲居で口濯ぎ
仰いで、樹の碧花摘む
足洗う、玉天の池水に
櫂鳴る、牽牛星の河中
鞭打つ、瑞雲の奔馬に
轡落つ、騎竜から嶺へ
衣より、地平に塵捨て
裾絡げ、濁波を渉らん
願うに、山沢で結ばれ
剛柔は、和して一つに
清めん、手を取りつつ
【大意】
(私たち真人真女(仙人)は、雲居にそびえる宮城に住んでいます。瑞雲に乗駕して、天地の際を飛翔するのです。さあ、あなたも私とともに天地を往き来して、自然のなかで、ふたり結ばれましょう)
鬱姫は、
「紫微夫人の良きはかりごとによって、お会いすることができました」として、楊羲が急ぎ書き終わった詩文を一読し、
「今、この詩をあなたに贈ります。私のまごころを吟じたものですから、あなたは余計なことを考えてはいけない。詩文にわからない箇所があったら、自分で考えなさい」と言った。
紫微夫人は、楊羲に、真人真女のなかまになるよう誘い、
「さようなら。明日また、鬱姫とともに参りましょう」と言うと去って行った。
鬱姫は少しの間留まっていたが、楊羲の手をとって、
「今はあなたを思い、詩を吟じるのみです。明日また参りましょう」、と、向かった戸口を出る前に、忽然と姿を消した。
(参考:石井昌子著「真誥」)