2024年 01月 14日
2024日記【014】境界と自由895
承前:
西鶴は「大坂北浜には流れ歩く金銀もある」と言う。そのひとつのピークが元禄前期までだったのだろう。
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元禄元年秋と推察されているころ西鶴は書く「私はひとり寂しく雀の小弓(おもちゃの弓矢)を取り出して弄んでいると、竹の組戸を叩いて、亭坊(坊さん)、亭坊と呼ぶ声は関東めきたる」、榎下(宝井)其角が江戸からやって来たのだった。其角は江戸からやって来たのだから、いつ何時ころ大坂の西鶴のもとを訪ねる旨、知らせていたのだろう。
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この西鶴の文の前段には、近所の女が何かを槌で打つ音、隣家の亭主が養子に文句を言う声、など生活音が描写されている。実は、西鶴はぼつねんと其角を待っているのだ。そこへ関東弁で「亭坊!」と呼ぶ声がする。西鶴は、其角が来たな、嬉しい、ということを、竹の組戸を叩く音、関東めきたる声、で微妙にあらわす。
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おそらく其角の「亭坊」は、アクセントがなく、ぶっきらぼうで、関西の「て」にアクセントがある物言いとは違う。