2024年 01月 15日
2024日記【015】境界と自由896
承前:
西鶴「私はひとり寂しく雀の小弓(おもちゃの弓矢)を取り出して弄んでいると、竹の組戸を叩いて、亭坊(坊さん)、亭坊と呼ぶ声は関東めきたる」という境地と、「好色」「北浜に流れ歩く金銀」の世界とはまったく違う。
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ここで、西鶴は出版社と組んで、「好色」や「金銀」というテーマを選び、必ず売れる、つまり儲けるためのシリーズを書いたのだろうか、という想像がわいてくる。
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前述、西鶴はこの年(貞享5年)の正月、「日本永代蔵」を出版しているけれども、貞享5年秋には元禄に改元されている。次の「世間胸算用」は、元禄5年の刊行だ。其角の大坂訪問が元禄元年の秋だとすると、「日本永代蔵」が京大坂だけでなく江戸の出版社も加わって無事出版され、いよいよ元禄の隆盛が始まる時期なのだ。
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さてそういう時に、つまり、「好色」から「金銀」に筆のテーマを転換し、江戸の出版社も巻き込んで売り出している時に、ぼつねんとおもちゃの弓矢で遊び、其角の到来を待つ、という西鶴は流行作家の西鶴とはまた違うのだ。