「不可触民バクハの一日」で初の出版を英国でなしたアーナンド、そしてガンジーも、アンベードカルも英国で学んだという意味では、インド社会では特別なエリートといえる。


アーナンドを人道主義的な社会主義者という範疇に入れる向きもあるが、どちらかというと文化人だろう。一方、アンベードカルは不可触民の解放に尽くした、不可触民を出自とする知識人だ。


ガンジーは、インドの伝統的な保守層、つまりヒンドゥーカーストの側からの改革を訴えた側面が強いので、アンベードカルのような不可触民としての強い動機を持つ人からは評価されない場合が多い。


そのひとつの例が、「不可触民バクハの一日」に書かれた「分離選挙」への賛否ということになる。


ガンジーは、ヒンドゥーカースト側と不可触民との(理想的な)融和を考えたわけなので、不可触民に固有の選挙権/非選挙権を与える分離政策には反対をした。それに対して、アンベードカルのような不可触民側にとっては、そのような融和策はまやかしと思われた。


実はこの論点は現代でも解消していない。独立インドの憲法で不可触民制は終焉したにもかかわらず、事実上の不可触民は(保護する対象として)存在する。その結果、今でも掃除を家業として継承していくという現実がある。


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2021日記【302】境界と自由184_e0022344_14572809.jpg

















# by kugayama2005 | 2021-10-29 17:01 | 2021日記 | Trackback | Comments(0)


承前:「不可触民バクハの一日」4


11 バクハはアッパーカーストの子どもたちとクリケットの試合をするが、乱闘に終わってしまう

12 けがをした子どもの母親から、「穢れた不可触民がいたから起こったことだ」と激昂され、バクハは蹌踉として家に戻る。しかし、午後の仕事をさぼったことから、父に家を追い出される

13 街をさまようバクハは偶然、マハトマ・ガンジーの演説に行きあたる

ガンジーは不可触民に特別の選挙権を与える「分離選挙」に(平等の権利を与えるべきとの趣旨で)反対し、獄中で「死に至るまでの断食」(1932年)を行い、国中が震撼した。不可触民だけの選挙権/非選挙権枠の創設を主張する(不可触民出身の)アンベードカルは妥協して、当初の「分離選挙案」を撤回した(この小説ではその直後にバクハがガンジーの演説を聞いたという設定になっている)

14 ガンジーの「私は掃除が好きだ。不可触民がヒンズー社会をきれいにしている。私の願いは不可触民の解放です」という演説に打たれ、足は自然と家の方に向って、バクハは「この話を父や妹、弟にしよう」と思うのだった


ーおわり


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2021日記【301】境界と自由183_e0022344_14564235.jpg

















# by kugayama2005 | 2021-10-28 17:00 | 2021日記 | Trackback | Comments(0)


承前:「不可触民バクハの一日」3


8 父が仕事をさぼると、バクハが街の掃除に行き、弟にトイレ掃除をさせる

9 バクハは街で容赦ない罵声を浴び、不可触民であることに打ちのめされるのだが、彼を差別するのはカーストに構成されたヒンドゥーであって、カースト外とされるイスラム教徒は彼に好意的だ

10 バクハは仕事帰りに食事のお貰いをするが、ヒンドゥー行者も喜捨を求めて角角を回る。ヒンドゥー行者はカレーなど良いものをもらえるが、バクハはチャパティーしかもらえない


チャパティーは水溶小麦粉を薄く焼いた、具なしのお好み焼き様のもの(ナンはタンドール窯で焼く高級品)


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2021日記【300】境界と自由182_e0022344_14562163.jpg

















# by kugayama2005 | 2021-10-27 17:02 | 2021日記 | Trackback | Comments(0)


承前:「不可触民バクハの一日」2


5 バクハは叔父の手伝いで、英軍のトイレ掃除にも行った。給料は父に召し上げられてしまうが、軍人からもらうチップは自分の小遣いになる

6 バクハは英軍のかっこいい服装に憧れて、似たような古着を買った

7 英語も上達しようと、学校に行っているアッパーカーストの子どもに教えてもらうことにした


ー続く


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# by kugayama2005 | 2021-10-26 17:01 | 2021日記 | Trackback | Comments(0)


「不可触民バクハの一日」(ムルク・ラジ・アーナンド 山際素男訳:1984年三一書房)※1942年に前田河廣一郎訳(「觸るべからず」あり)


上記は英語によるインド作家の作品で、バクハという青年の生活を描いたもの。


1 バクハの父は道路掃除人であり、バクハは家業を継承すべくトイレ掃除が仕事だ

2 バクハの家は土造りの一間で、父と妹弟と住んでいるが母は病死した

3 その居住区には、不可触民の土小屋がひしめき合って並んでいる

4 バクハは家族が寝ているうちに起き、共同トイレを掃除に行く


ー続く


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# by kugayama2005 | 2021-10-25 17:00 | 2021日記 | Trackback | Comments(0)

君の名前の意味を聞いたら “山のきつね” まき毛はいかんせん狐色 瞳は草の緑をうつす好奇心。


by kugayama2005